肋骨骨折とは

肋骨は、胸部を囲む12対の骨で、肺や心臓などの臓器を保護する役割を担っています。肋骨骨折は、この肋骨に外部からの衝撃や咳などにより、骨が折れたり、ひびが入ったりする骨折です。
原因
外傷: 交通事故、転倒、スポーツでの衝突など、胸部に強い衝撃が加わることで起こります。
咳: 激しい咳が続くことで肋骨に負担がかかり、疲労骨折を起こすことがあります。
骨粗鬆症: 骨がもろくなる骨粗鬆症の方は、軽い衝撃でも骨折しやすい傾向があります。
腫瘍: 肋骨に腫瘍ができ、骨が弱くなることで骨折することがあります。
骨折の分類
肋骨骨折は、骨折の程度や場所によって以下のように分類されます。
・単純骨折: 肋骨が1本だけ折れる骨折
・多発骨折: 複数の肋骨が折れる骨折
・疲労骨折: 体幹の捻りなど、繰り返しの負荷によって徐々に肋骨が折れていく状態で、背部の湾曲部に好発

・肋骨骨折の部位
①第1~3肋骨: 上位肋骨骨折と呼ばれ、比較的稀ではあるが、鎖骨や肩甲骨の骨折を伴うことが多い
②第4~10肋骨: 中位肋骨骨折と呼ばれ、特に5〜8肋骨を損傷することが多い
③第11・12肋骨: 下位肋骨(浮遊肋)骨折と呼ばれ、腹部臓器損傷を伴うことがある

症状
- 肋骨部周辺の痛み
- 肋骨骨折部の圧痛
- 咳、深呼吸時の痛み
- 運動時痛、寝返り痛
- 呼吸困難
- 熱感
- 血腫、皮下出血
- 骨折部の変形
- 夜間時痛

合併症
肋骨骨折は、比較的軽度な外傷から重篤なものまでありますが、合併症のリスクも伴います。合併症の種類や程度は、骨折の部位・本数・程度・年齢や基礎疾患などによって異なります。
呼吸器系の合併症
- 気胸:肺に穴が開き、空気が胸腔内に漏れることで肺が虚脱する状態です。呼吸困難や胸痛を引き起こします。
- 血胸:肋骨骨折により血管が損傷し、血液が胸腔内に溜まる状態です。呼吸困難やショックを引き起こすことがあります。
- 肺炎:肋骨骨折の痛みにより呼吸が浅くなり、痰が溜まりやすくなることで肺炎を引き起こすことがあります。高齢者や基礎疾患のある患者でリスクが高まります。
- 無気肺:肺の一部が虚脱し、呼吸ができなくなる状態です。呼吸困難や低酸素血症を引き起こします。
循環器系の合併症
- 大血管損傷:肋骨骨折により、大動脈や鎖骨下動脈などの大血管が損傷することがあります。出血多量やショックを引き起こす危険な状態です。
- 心臓損傷:肋骨骨折が心臓に及ぶと、心臓挫傷や心タンポナーデ(心臓が圧迫される状態)を引き起こすことがあります。
その他の合併症
- 肋間神経損傷:肋骨骨折により肋間神経が損傷し、激しい痛みや感覚異常が残ることがあります。
- 臓器損傷:肋骨骨折に伴い、肺、肝臓、脾臓、腎臓などの臓器が損傷することがあります。
- 感染症:開放骨折の場合や、気胸・血胸、手術などを行った場合に、感染症を引き起こすことがあります。
治療法
症状によって治療を選択して、早期回復を促します!
肋骨骨折部の転位(ずれ)が少ない場合は、整復・固定を行い保存療法を行います。転位が大きい場合や整復が困難な場合、神経や血管が巻き込まれている可能性が高い場合は整形外科にて手術を選択することがあるため、近隣の整形外科へ紹介して治療を併用していきます。
当院では骨折部に対して固定・安静・冷却を施しながら、経過次第では物理療法・鍼灸治療と並行してリハビリテーションを施行し、骨の再生・疼痛緩和と筋緊張の除去、関節の可動域拡大を目的として治癒を促します。
物理療法で患部を刺激をすることで治癒力を促進し、早期回復を目指す治療を施行します。
超音波治療
微弱な超音波によって骨に微細振動を照射し骨癒合を促進します
マイクロカレント(微弱電流波)
生体内に流れる電流と同様の微弱電流を人工的に流すことで細胞組織の修復を行います
症状の経過次第で、疼痛緩和と筋緊張の除去・関節の可動域拡大を目的としてスポーツマッサージや鍼灸治療を施行します。
- 胸背部スポーツマッサージ
- 関節モビライゼーション
- 脊柱マニュピレーション
- 鍼灸治療
- 罨法(アイシング・ホットパック)
リハビリテーションでは、日常生活の復帰を目指すメディカルリハビリテーションだけでなく運動(競技)復帰を目指すアスレティックリハビリテーションも行います。
- 体幹の可動域訓練
- 胸背部の筋力トレーニング
- コアエクササイズ
- 日常生活動作の獲得
- 競技別トレーニング
コレクティブエクササイズ