前十字靭帯損傷

前十字靭帯（ACL）損傷はスポーツ現場などでよく起こる外傷で、多くの場合は膝関節に外反力が加わった状態で大腿が内旋・外旋した際に強く引っ張られて起こるといわれています。これは前十字靭帯が大腿骨外顆後方から脛骨の膝関節面前内方にかけて斜めに走行しているためです。このような運動は着地時や方向転換、ジャンプの踏切時などで多くみられ、膝関節外反によって起こる内側側副靭帯損傷と内側半月板と合わせて不幸の三徴と呼ばれています。

ACLはスポーツ活動中に損傷する場合が多く、発生メカニズムも様々です。大きくはコンタクトスポーツなどで外力が直接的に膝にかかる接触型と膝に急激な収縮力や捻りが加わる動作により発生する非接触型に分られます。

接触型

膝の外側へのストレス・伸ばされた状態での直接的な外力など、コンタクトスポーツで多発します。

• ラグビーのタックル
• サッカーのスライディング
• 柔道技など

非接触型

膝の回旋力による損傷

ニーイン→膝が内側に入る

トゥーアウト→つま先が外側に向く

• ジャンプ着地時
• 急激なストップ動作
• 方向を変えるカッティング動作
• ステップ動作

受傷直後は腫脹や疼痛を認めないことも多く、時間と共に腫脹や血腫・疼痛・可動域の制限などが出現します。前十字靭帯は関節内靭帯で大腿骨と脛骨に付いており、膝関節において下腿の前方移動を抑える働きがあります。損傷が起こると膝関節前方への不安定性が出てきます。この不安定性があると運動を行った際に“膝崩れ”という膝関節が外れるような感じが起こり、軟骨や半月板の損傷も疑います。

• 膝の痛み
• 腫脹・血腫
• 可動域制限
• 関節内水腫
• 膝崩れ・関節不安定性
• 半月板のはまり込み・クリック音

前十字靭帯損傷の治療には手術と保存療法があります！

前十字靭帯はほとんどの場合で自己修復されないため、手術では他の腱を膝関節に移植します。当院では症状に合わせてアイシング・包帯による圧迫と固定、経過次第では運動による関節可動域の改善や筋力の維持・増強などを行い、症状の改善を目指し、同時に最終的な治療法を決めていきます。 

手術後には徒手療法や鍼灸治療・リハビリテーションを行います。

保存療法の原則は膝関節周囲筋の筋力増強と関節可動域の回復です。初期症状の炎症や疼痛改善には徒手療法や鍼灸治療・物理療法を中心に運動療法も行います。

• 固定・圧迫
• アイシング
• 徒手療法
• 鍼灸治療
• ハイボルテージ・EMS
• ストレッチ

前十字靭帯再建とリハビリ目標は安定性と可動域拡大・機能回復を目的とし、再受傷させない身体づくりの獲得が必要です。手術の有無や症状によって異なりますが、段階的に進めることが重要です。

• 補装具（サポーター）
• 関節可動域トレーニング
• 筋力トレーニング
• 協調性トレーニング
• 競技スポーツ別トレーニング

リハビリテーションでは、痛みに対しての再発予防、運動（競技）復帰を目指すためのアスレティックリハビリテーションも行います。

• 下肢の可動域訓練
• 下肢の筋力トレーニング
• バランストレーニングなど
• 日常生活動作の獲得
• 競技別トレーニング
• コレクティブエクササイズ

スポーツをしている人は運動後のケアも大切になるため、運動頻度や強度・ピーキングなど選手に合わせた治療を行います。

競技復帰の基準

• 痛みがなくなる
• 柔軟性・筋力の左右差がほぼ同等
• 膝関節可動域の適正
• 競技特性の基本的な運動が可能
• フィットネスレベルの向上

過去に靭帯断裂を経験した方や、フィジカル機能低下により痛みが出現する場合では、アライメント不良・パフォーマンス不良への修正による効率的な統合運動能力の獲得が必要となります。

▶︎アライメント不良に対してのインソール療法について

▶︎パフォーマンス不良に対してのコレクティブエクササイズについて

↑こんな選手には効果的！

• 以前ケガしたところが痛む
• バランスが悪く転倒しやすい
• 足の裏が扁平足
• 足の趾（ゆび）が曲がらない
• 膝が内側・外側に向いている
• 足の他にも痛みがある
• ふくらはぎが張りやすい
• パワーポジション不良