足関節捻挫とは
捻挫とは外力により関節の動きが正常範囲を越える事によって起こる軟部組織(靱帯、関節包など)の損傷です。足関節捻挫は日常・スポーツ現場において高頻度で起こり得る外傷ですが、重症度としてはあまり高く無い事が多い為に、不適切な治療や放置される事も多いです。その結果再発し、長期間にわたり痛みや、関節の不安定性増大により日常生活や競技に支障をきたす事もあります。
原因
ジャンプ動作の着地時や切り返し・踏み込み動作時、相手との接触により無理な姿勢を強制された時などに受傷する事が多く、特に足関節を内返しに強制される事が多いです。
また、以前に足関節捻挫を受傷し、その足関節自体に不安定性があり、再受傷する場合もあります。
部位
内反(内返し)捻挫で損傷しやすい
- 前距腓靭帯
- 踵腓靭帯
- 後距腓靭帯
さらに前方の
- 二分靭帯
- リスフラン靭帯(関節)
外反(外返し)捻挫で損傷しやすい
- 三角靭帯
重症度
重症度 | 靭帯損傷 | 関節不安定性 | 治療方針 | 治療期間 |
Ⅰ度 | 断裂なし | ほぼ無し | 保存療法 | 2〜3週 |
Ⅱ度 | 部分断裂 | 軽〜中程度 | 保存療法 | 4〜8週 |
Ⅲ度 | 完全断裂 | 強い | 保存 or 手術 | 8〜16週 |
小児はここがPoint!!
靭帯の付着部は4層構造の強固な固定力を有しているが、小児では軟骨成分を多く含むことから組織自体が脆弱な構造になっています。そのため、小児期に内返しを強制されると靭帯損傷ではなく、裂離骨折(引っ張られて骨が剥がれる)を起こしてしまうことがあります。
症状
足関節を内返しに捻った場合、主に外果(外くるぶし)周囲の痛み・腫脹・熱感があり、痛みにより関節可動域(関節の動かせる範囲)に制限が出現します。特に前距腓靭帯の損傷が多く発生します。また、捻る強度・向きによって内果(内くるぶし)に同様の症状が出現する場合もあります。
- 痛み(圧痛)
- 腫れ
- 熱感
- 血腫(赤・紫に変色)
- 可動域制限(足を動かしづらい)
- 関節の不安定感
- 歩行困難
合併症
捻挫の影響により足関節に付着している靭帯だけでなく、様々な合併症を引き起こすことがあります。
①腓骨外果骨折
子どもでは、靭帯ではなく付着部の骨が剥がれ骨折となる場合があります。成長に関わる場合もあるため注意が必要です。
②前脛腓靭帯損傷
前脛腓靭帯は2本の下腿の骨をつなぐ靭帯で、損傷すると足部が開排(広がり)し足関節の不安定性を引き起こします。
③腓骨筋腱損傷
腓骨筋腱は外果(外くるぶし)の後方を通り、足の裏から内側に着くため、強い内反によって損傷し炎症を起こします。
④第5中足骨骨折
通称『下駄骨折』と呼ばれ、鼻緒が当たる部分(足の小趾)を骨折してしまうことがあります。
⑤距骨軟骨損傷
足部の前内側部で距骨と脛骨がぶつかり炎症を起こします。
その他にも様々な症状を合併することがあります。
治療法
受傷直後は安静・固定!
日常生活・スポーツ・仕事の痛みに考慮しながら、治療を行っていきます!
損傷の重症度によって期間は異なりますが、固定・安静・アイシングを行います。特に損傷初期の固定・安静は重要で、症状の経過に影響します。固定は包帯固定や硬性・軟性固定材・テーピングを使用し、必要であれば松葉杖で免荷します。
並行して患部に対しての物理療法などで炎症と疼痛を軽減させていき、早期回復を目指す治療を施行します。初期段階では、足関節を安静・固定することで動きを制限し、負担を軽減することができます。
また、靭帯の完全断裂や骨折を伴う場合は、観血療法の適応となることがあります。
超音波治療
微弱な超音波によって軟部組織の治癒力を促進します
マイクロカレント(微弱電流波)
生体内に流れる電流と同様の微弱電流を人工的に流すことで細胞組織の修復を行います
疼痛緩和と筋緊張の除去・関節の可動域拡大を目的としてスポーツマッサージや鍼灸治療を施行します。
- 下肢スポーツマッサージ
- 関節モビライゼーション
- ストレッチ
- 鍼灸治療
- 罨法(アイシング・ホットパック)
経過次第でリハビリを行い、足関節周囲の筋力強化・安定性・柔軟性向上などを目標に再発しないような身体づくりを目指していきます。また、日常生活でできるセルフケアも重要になってきます。
*骨端線(成長に必要な軟骨組織)が閉鎖する前に高い強度のトレーニングは注意が必要!
リハビリテーションでは、痛みに対しての再発予防、運動(競技)復帰を目指すためのアスレティックリハビリテーションも行います。
- 足関節の可動域訓練
- 足趾・下肢の筋力トレーニング
- バランストレーニングなど
- 日常生活動作の獲得
- 競技別トレーニング
コレクティブエクササイズ
スポーツをしている人は運動後のケアも大切になるため、運動頻度や強度・ピーキングなど選手に合わせた治療を行います。
過去に足関節捻挫を経験した方や、フィジカル機能低下により痛みが出現する場合では、アライメント不良・パフォーマンス不良への修正による効率的な統合運動能力の獲得が必要となります。
↑こんな選手には効果的!
- 以前ケガしたところが痛む
- バランスが悪く転倒しやすい
- 足の裏が扁平足
- 足の趾(ゆび)が曲がらない
- 膝が内側・外側に向いている
- 足の他にも痛みがある
- ふくらはぎが張りやすい
- パワーポジション不良