肩関節唇損傷とは
関節唇(かんせつしん)は、肩関節の関節窩(受け皿)の縁を覆っている軟骨性の組織です。関節唇は肩関節の安定性を保ち、関節の動きをスムーズにする上で重要な役割を果たしています。
肩関節唇損傷の中でも、スラップ損傷とバンカート損傷は比較的多い疾患です。
原因
外傷
肩への直接的な打撃・転倒・肩関節脱臼などが原因となります。
特に、肩関節の前方脱臼は関節唇損傷(バンカート損傷)の主要な原因です。
オーバーユース
野球・テニス・バレーボールなど、腕を大きく振り上げる動作を繰り返すスポーツで発症する可能性があります。投球動作やサーブなどで肩関節に過度な負担がかかり、関節唇が損傷します。
また、日常生活や仕事で肩を酷使することで徐々に損傷が蓄積していく場合もあります。
加齢による変性
加齢に伴い関節唇が脆弱化し、軽微な外力でも損傷しやすくなります。
分類
SLAP(スラップ)損傷
SLAPとは、Superior Labrum Anterior Posteriorの略で、上方関節唇の前方から後方にかけての損傷です。
TYPE1
関節唇の辺縁が擦り切れた状態
TYPE2
上方関節唇と上腕二頭筋腱の付着部が関節窩から剥離し、不安定性を伴う
TYPE3
関節唇がバケツの柄のように剥がれた状態
TYPE4
関節唇がバケツの柄のように剥がれ、さらに上腕二頭筋腱にまで損傷が及んだ状態
Bankart(バンカート)損傷
肩関節前方脱臼によって誘発する、関節窩前下方の関節唇損傷です。
関節唇が剥がれたり避けることによって、反復性脱臼の原因になります。
症状
肩関節内の損傷なので、関節を動かすと発痛することが多いです。
特に、バンカート損傷は関節前方が痛くなります。
- 肩関節の痛み/運動時痛
- 可動域制限
- 脱力感
- 不安定性
- 反復的な脱臼
- 夜間時痛
- クリック音
治療法
外傷では患部の安静を促し
慢性的な痛みには運動療法を積極的に行います!
ケガによる脱臼などの急性期では患部の固定・安静を並行して、アイシングや物理療法などで炎症を抑制していきます。
同時に疼痛緩和・血液循環の促進と筋緊張の除去・可動域改善を目的とし、徒手療法や物理療法・鍼灸治療を施行していきます。
過去に損傷した既往歴があり、慢性的に痛みが出現する場合には、肩関節に対してのリハビリテーションや運動療法(コレクティブエクササイズ)を取り入れることで日常生活・スポーツ時における予防改善を目指していきます。
また、肩関節への負荷を下げるように日常生活指導やセルフケア、運動中の痛みに対しても、テーピングやサポーターを処方して痛みを抑制させます。
- 頚背部〜上肢スポーツマッサージ
- 脊柱マニュピレーション
- 関節モビライゼーション
- ストレッチ
- 罨法(冷・温熱刺激)
- 鍼灸治療
- 超音波治療
- 干渉波・EMS
- ハイボルテージ
- マイクロカレント(微弱電流波)
- スーパーライザー
- 包帯・テーピング
- サポーター
インソール療法
急激な痛み・症状の軽減など経過次第で、競技動作に合わせた無理のない範囲の運動療法を行っていきます。
当院ではコレクティブエクササイズを取り入れ、頚部〜肩甲胸郭・体幹〜上肢の筋力強化と柔軟性・安定性・バランス力向上及び腰椎骨盤−股関節複合体(LPHC)の機能向上を目指していきます。
スポーツをしている方には、肩関節痛の原因をスクリーニングし、身体機能や柔軟性を分析して必要な最適動作の獲得を目標とします。
種目や競技日程・運動習慣や年齢などを考慮してゴールを設定し、それに必要な運動療法を行います。
- アスレティックリハビリテーション
- 腰椎骨盤−股関節複合体(LPHC)機能の向上
- LPHC柔軟性・安定性向上
- 頚部−上肢−体幹−下肢筋力・協調性強化
- 筋バランス向上
- 競技動作に対しての身体操作訓練
コレクティブエクササイズ
肩関節痛の原因となる各部位のアライメント不良・スポーツ時のパフォーマンス不良がある場合にはフィジカル機能に対しての修正が必要になります。
インソール療法・コレクティブエクササイズは、効率的な統合運動能力の獲得を目指し、痛みの改善とパフォーマンス向上に効果があります。
↑こんな選手には効果的!
- バランスが悪く転倒しやすい
- 足の裏が扁平足
- 足の趾(ゆび)が曲がらない
- 膝が内側・外側に向いている
- 踵の他にも痛みがある
- ふくらはぎが張りやすい