上腕骨外科頸骨折とは
上腕骨外科頚骨折は上腕骨近位端の「外科頚」で発生する骨折で、主に転倒して手をついたときに損傷します。
上腕骨は肩関節に接した骨で、近位部は解剖頸・外科頸、大結節・小結節の4部位に分かれます。
外科頸は大・小結節部より骨幹部に細く移行する部位で、解剖学的には関節包付着部から大胸筋付着部の範囲をいいます。
高齢者に多い骨折の一つで、骨癒合がしないことは珍しいですが、肩関節の拘縮はほぼ必発のため、拘縮を抑えることが重要になります。
原因
高齢者では転倒などの軽い外力で起こり、腕を伸ばした状態で地面に着くといった介達外力で発生しやすいです。
頻度は低いですが、直接的な衝撃などの直達外力でおこることもあります。
骨折の分類
外転骨折
腕が伸びたまま転倒すると地面に手をついたときに肩関節に圧がかかり、上腕骨が固定されます。
この状態で腕と身体が離れるような外力が(回旋力など)働くと、上腕骨部に外転外旋力が加わり、細い部位の外科頚部に骨折が起こります。
内転骨折
外転骨折とは逆に、腕と身体が近づくような外力が働くと上腕骨頚部に内転内旋力が加わり骨折が起こります。
鎖骨骨折と発生機転が似ており、転倒して手をついたときに、外力が肩関節を介して鎖骨に作用したときには鎖骨骨折になります。
もう一方で、肩関節がロックされることで上腕骨に外力が加わると外科頚骨折になります。
症状
肩関節の腫れや変形が見られ、内出血は肩部よりも上腕内側部・前胸部に多く確認されます。
外転骨折は肩関節前方脱臼に似ている外観を呈します。
転位・変形は、外転骨折では腕が外側に、内転骨折では内側に向いてるように見えます。
- 肩の痛み・圧痛
- 骨折部の内出血
- 腫脹(はれ)
- 熱感
- 肩関節の運動時痛
- 関節可動域の制限
- 転位と変形
偽関節とは?
偽関節は骨折部がしっかり治らずに骨癒合が終了してしまうことです。
骨折部が硬化して、名前の通り関節のようになってしまいます。
一般的には、6ヶ月以上経過して骨折の固有症状である異常可動性が明確な場合に偽関節と判断されます。
固定をしていなかったり、捻挫と誤診されてそのまま放置していたりすると、偽関節を発症してしまう確率は高まります。
合併症
肩関節脱臼
血管損傷
腋窩動脈の圧迫損傷を合併します。
また、血行障害による無腐性骨壊死になる可能性もあります。
神経損傷
腋窩神経損傷による三角筋麻痺(肩を上げれなくなる)や知覚鈍麻を生じます。
機能障害
肩関節の拘縮による可動域制限を生じます。
治療法
症状によって治療を選択して、早期回復を促します!
上腕骨の外科頚骨折は骨癒合に約4〜6週を要します。
接骨院では古来からの柔道整復術を使って骨折・脱臼整復を行います。急性期には固定・安静・冷却などの治療法を選択して疼痛を緩和させていきます。
機能障害防止のために、肩関節運動を制限しながら早期に徒手療法・物理療法を取り入れながらリハビリテーションを施行していきます。
骨折度合いや転位・脱臼の合併がある場合では手術が適応になることもあります。
当院では症状の経過次第で、疼痛緩和と筋緊張の除去・関節の可動域拡大・むくみ軽減などを目的としてスポーツマッサージや鍼灸治療を施行します。
- 上肢スポーツマッサージ
- 関節モビライゼーション
- 鍼灸治療
- 罨法(アイシング・ホットパック)
物理療法で患部を刺激をすることで治癒力を促進し、早期回復を目指す治療を施行します。
超音波治療
微弱な超音波によって骨に微細振動を照射し骨癒合を促進します
マイクロカレント(微弱電流波)
生体内に流れる電流と同様の微弱電流を人工的に流すことで細胞組織の修復を行います
リハビリテーションでは、日常生活の復帰を目指すメディカルリハビリテーションだけでなく運動(競技)復帰を目指すアスレティックリハビリテーションも行います。
- 肩関節の可動域訓練
- 上肢の筋力トレーニング
- 胸郭−肩甲帯可動性トレーニング
- 手指巧緻性トレーニング
- 日常生活動作の獲得
- 競技別トレーニング
コレクティブエクササイズ