テニス肘(上腕骨外側外側上顆炎)とは
テニス肘は上腕骨の外側上顆から起始(付着)している前腕伸筋群が、屈筋より筋力が弱く、強い衝撃や繰り返しの負荷によって炎症が起こる疾患です。
また、付着している骨膜に牽引力がかかることで骨膜や滑膜ひだに炎症が起きて、強い疼痛を引き起こします。テニスや野球・ゴルフなどの運動や日常生活での家事・パソコン作業の繰り返しで発生することもあります。
原因
オーバーユース
外側上顆に付着する前腕伸筋群の強い牽引力によって炎症を起こします。テニスのバックハンドストロークやゴルフのスイングで前腕の伸筋群が収縮した状態で遠心性の負荷がかかり続けることで発生します。特に40歳以上の女性に多く、オーバーユースや腱の変性が考えられます。
症状
前腕〜上腕骨外側上顆の圧痛やドアノブを回したり、タオルを絞る動作で痛みが出現します。痛みが増強すると肘を伸ばして物を持ち上げる動作でも痛くなります。
- 肘外則の痛み
- 前腕の痛み・重だるさ
- 家事・パソコン・スポーツでの痛み
- 熱感
テニス肘の検査法
中指伸展テスト
中指を伸ばす際に抵抗をかけると痛みが出る
トムゼンテスト
手首を背屈する際に抵抗をかけると痛みが出る
チェアテスト
肘を伸ばしてに物を持ち上げようとすると痛みが出る
テニス肘の重症度
重症度によって症状が異なるため運動強度をコントロールする必要があります
重症度 | 症状 |
grade Ⅰ | テニスのプレー中は痛みがないが終了後に痛む |
grade Ⅱ | テニスのプレー中に痛み、プレーに支障がある |
grade Ⅲ | 日常生活でも痛みがあり、テニスはできない |
治療法
テニス肘の治療は運動中止ができないケースも多く、運動療法と併用しながら治療を進めていきます!
テニス肘は基本的に保存療法であり、肘関節周囲の筋緊張の緩和・ストレッチや患部に対しての物理療法などで炎症と疼痛を軽減させていきます。疼痛が強い場合は、薬物療法として非ステロイド系抗炎症剤を処方されることもあります。
運動中や日常生活で痛みが出ている場合には、外側上顆(前腕の筋肉が付着する部位)への牽引力を緩和するためにエルボーバンドやテーピングを処方します。特に運動を続ける選手は痛みを抑えるために重要です。
- 上肢スポーツマッサージ
- 関節モビライゼーション
- 鍼灸治療
- 超音波治療
- 干渉波・ハイボルテージ・EMS
- マイクロカレント(微弱電流波)
- アスレティックリハビリテーション
- 冷罨法(アイシング)
- テーピング
- サポーター
−テニス肘のピリオダイゼーション−
急性期
急性期の治療では炎症の沈静化を図ることが第一優先となります。前腕伸筋群をリラックスさせる肢位に固定し、アイシングや物理療法を行い、競技(テニス)は1〜2週程度中止することで予後の改善に影響します。
日常生活で痛みが強い場合は手のひらを上に向けて物を持つなど伸筋群への刺激をなるべく減らします。
亜急性期
亜急性期では治療と並行しながら筋力トレーニングや動作改善を行います。前腕筋群のストレッチ・前腕伸筋群の等尺性トレーニングなどを順次導入していきます。この時期の疼痛改善は競技復帰を誤り、炎症の再熱・症状の慢性化を引き起こすことがあり、十分なリハビリと治療を必要とします。
復帰・予防期
テニスへの復帰時は再発を予防するためにエルボーバンドやテーピングで補強し負荷をできるだけ軽減した状態で始めます。運動後はストレッチやクールダウン、アイシングを徹底し治療とリハビリも継続しながらパフォーマンスを向上させていきます。
肘の痛みが運動時(テニス時)のフィジカル機能に原因がある場合には、アライメント不良・パフォーマンス不良に対しての修正が必要になり、効率的な統合運動能力の獲得を目指します。
↑こんな選手には効果的!
- バランスが悪く転倒しやすい
- 足の裏が扁平足
- 足の趾(ゆび)が曲がらない
- 膝が内側・外側に向いている
- 踵の他にも痛みがある
- ふくらはぎが張りやすい
- パワーポジション不良