大腿部肉離れとは
肉離れとは打撲などの直達外力による「筋挫傷」とは異なり、自らの筋力が過度な負荷に耐えられず(介達外力によって)発症する筋挫傷(筋損傷)です。肉離れの多くは遠心性収縮(筋の長さは伸張されながらも収縮する形態)によって筋腱移行部での損傷が多く診られます。特にハムストリングスや大腿四頭筋で多く見られ、競技特性が大きく関与しています。
原因
大腿四頭筋
大腿四頭筋の中で最も受傷しやすいのは大腿直筋で、股関節が伸びて膝関節が曲がっている状態が最も張力が強い肢位です。動作開始時やスピードの急激な変化など、強力な筋収縮の負荷によって損傷しやすくなります。
- 陸上のスタート時
- サッカーのキックなど
- 柔軟性低下
- 筋疲労時
- 電解質不足
- コンディショニング不良
- 不適切なフォーム
ハムストリングス
ハムストリングス(大腿二頭筋長頭)は身体の中で最も損傷しやすい筋です。スポーツなどの疾走中の損傷が多く、ブレーキ動作(踵の接地時)や蹴り出しの過程など、筋が収縮しようとしている状態で伸ばされる時に損傷しやすいです。
- ダッシュ着地時
- サッカーのキックなど
- 柔軟性低下
- 筋疲労時
- 電解質不足
- ウォーミングアップ不足
- コンディショニング不良
- 不適切なフォーム
- 筋のアンバランス
小児はここがPoint!
小児までは肉離れを起こすほどの自家筋力を持ち合わせていないため、肉離れはほとんど診られません。小学校高学年くらいから運動量と質が向上し自家筋力も強くなってきますが、成長軟骨(未完成な骨)のため、筋腱の付着部を骨折をすることがあります。大腿部の筋はその多くが骨盤に付着するため骨盤骨裂離骨折を起こします。上・下前腸骨棘や坐骨結節の裂離骨折は小児によく診られる骨折の一つです。
症状
重症度によって異なるが「ブチッ」と切れたようなpop音や引っ張られたような痛みを感じ、運動痛やストレッチ痛・腫脹や熱感・皮下出血や硬結が診られます。
- 強い圧痛
- 運動痛・ストレッチ痛
- 腫脹・熱感
- 皮下出血(24時間以降)
- 陥凹(完全断裂時)
重症度
Ⅰ度 | Ⅱ度 | Ⅲ度 | |
程度 | 筋腱の微細損傷 | 筋腱移行部の損傷 (部分断裂) | 筋腱移行部の断裂 (完全断裂) |
症状 | 軽度の痛み 炎症症状 | 筋力・可動域制限 | 陥凹の触知 |
膝関節可動域 | 90°以上可能 | 90°以上不可 | 45°以上不可 |
治療法
受傷直後は安静・固定!
競技復帰へのリハビリを進めながら治療を行っていきます!
損傷初期の処置はとても重要で、症状の経過に影響します。早期にアイシング・固定を行い、内出血や腫れ・痛みを抑え、炎症を抑制させていきます。また安静・固定することで動きを制限し、負担を軽減することができます。
受傷から数日間は患部に対しての鍼灸療法や物理療法などで早期回復を目指す治療を施行します。
損傷の重症度によって固定期間や復帰時期は異なりますが、経過観察しながら慎重に治療を進めていきます。
超音波治療
微弱な超音波によって軟部組織の治癒力を促進します
マイクロカレント(微弱電流波)
生体内に流れる電流と同様の微弱電流を人工的に流すことで細胞組織の修復を行います
炎症(急性期)が落ち着いた後は、疼痛緩和と筋緊張の除去・関節の可動域拡大を目的としてスポーツマッサージや鍼灸治療を施行していきます。
- 下肢スポーツマッサージ
- 関節モビライゼーション
- ストレッチ
- 鍼灸治療
- 罨法(アイシング・ホットパック)
- ハイボルテージ・EMS
- 超音波療法
経過次第でリハビリを行い、太もも周囲の筋力強化・安定性・柔軟性向上などを目的に再発しないような身体づくりを目指していきます。また、日常生活でできるセルフケアも重要になってきます。
リハビリテーションでは、痛みに対しての再発予防、運動(競技)復帰を目指すためのアスレティックリハビリテーションも行います。
- 下肢の可動域訓練
- 下肢の筋力トレーニング
- バランストレーニングなど
- 日常生活動作の獲得
- 競技別トレーニング
コレクティブエクササイズ
スポーツをしている人は運動後のケアも大切になるため、運動頻度や強度・ピーキングなど選手に合わせた治療を行います。スポーツをしている人は運動後のケアも大切になるため、運動頻度や強度・ピーキングなど選手に合わせた治療を行います。
競技復帰の基準
- 痛みがなくなる
- 柔軟性・筋力の左右差がほぼ同等
- 股関節可動域の適正
- 競技特性の基本的な運動が可能
- フィットネスレベルの向上
過去に肉離れを経験した方や、フィジカル機能低下により痛みが出現する場合では、アライメント不良・パフォーマンス不良への修正による効率的な統合運動能力の獲得が必要となります。
↑こんな選手には効果的!
- 以前ケガしたところが痛む
- バランスが悪く転倒しやすい
- 足の裏が扁平足
- 足の趾(ゆび)が曲がらない
- 膝が内側・外側に向いている
- 足の他にも痛みがある
- ふくらはぎが張りやすい
- パワーポジション不良