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2024.06.19(Wed)

熱中症予防に効果的な暑熱対策とは??

正しく理解し、予防することで熱中症を防ぐことができるということは理解できたと思います。

ここからは実際の熱中症対策の方法について紹介していきます。

熱中症対策の方法

暑さに身体を慣らす暑熱順化

暑熱順化とは

熱中症は、梅雨明けなどの気温が急に上昇したとき、部活練習における合宿初日や休み明けなどに多くみられます。これは「身体が暑さに慣れていない」からです。

暑い環境下において運動トレーニングを繰り返すと、暑さへの抵抗力(耐性)が高くなります。このように身体が暑さに慣れることを暑熱順化と言います。暑熱順化には長期暑熱順化と短期暑熱順化があります。長期暑熱順化とは熱帯・亜熱帯地域などの常に暑い気候下で、幾世代にわたって生まれ育った住民の順化で、少ない発汗量で効率的に暑熱環境下に対応できるような体型。体格、能動汗腺に変化します。

短期熱順化は運動時の熱中症を予防するものとして最も良く知られた対策で、繰り返し暑熱環境下で運動を行うと、体温が上がり、発汗や心拍数の増加などの反応が起こります。暑熱順化をしておくと、これらの反応が抑えられ、以下の効果が期待できます。

  • 体温上昇の抑制: 発汗の効率が上がり、体温上昇を抑制できます。
  • 脱水症状の予防: 水分吸収と保持能力が向上し、脱水症状を予防できます。
  • 心肺機能の向上: 心拍数が下がり、心肺機能への負担が軽減されます。
  • 疲労感の軽減: 筋肉の疲労物質が蓄積しにくくなり、疲労感を感じにくくなります。

スポーツ選手の暑熱順化の方法

大人の短期暑熱順化は1〜2時間の運動を、数日〜2週間程度繰り返すことにより完成します。しかし、前述したように、子供は暑熱馴化の速度が遅く、順化の程度も大きくありません。したがって、暑くなる前から2週間以上をかけて、運動の持続時間と強度を徐々を上げていく必要があります。

最初はウォーキング、ジョギング、サイクリングなど、軽い運動を週に3〜5回程度行います。運動時間は、1回あたり30分程度を目安に身体が慣れてきたら、徐々に運動強度と時間を増やしていきましょう。目安としては、1週間に10%程度ずつ増やすのが理想です。

可能であれば、気温30℃以上、湿度60%以上の暑い環境での運動が理想です。ただし、無理はせず、運動中はこまめに水分と塩分を補給します。水分補給の目安は、体重1kgあたり50ml程度です。睡眠不足や疲労は、熱中症リスクを高めるため、十分な睡眠と休息を取るようにしましょう。

体格、年齢、運動能力などの個人差を考慮し、自分に合った暑熱順化方法を行うことが重要です。体調が悪いときは無理せず、休息を取り気温、湿度、日射量などの周囲の環境に注意しましょう。必要に応じて、スポーツトレーナーやスポーツドクターなどの専門家の指導を受けることも有効です。

暑熱順化は、スポーツ選手にとって重要な要素です。適切な暑熱順化を行うことで、パフォーマンス向上と熱中症予防につながります。自分に合った方法で、しっかりと暑熱順化を行い、安全にスポーツを楽しみましょう。

積極的な水分摂取

水分摂取の重要性

私たちはスポーツ活動中にどの程度の汗をかいているのでしょうか。

運動中の発汗量は、1時間に2リットルにも及ぶことがあります。このような多量の発汗によって脱水が体重の2%以上になると、運動能力や競技成績への影響が大きくなります。したがって、運動中に汗によって失われた水分は適切に補給する必要があります。

水分補給には、身体から失われる水分量、すなわち発汗量に相当する量を補えばよいのですが、汗の量は個人の身体サイズ、気象条件、運動強度によって大きく異なり、一律には決まりません。適切な水分の補給量は、体重減少が体重の2%以内に収まることが目安になります。運動の強度が高い場合で、気温が高く、身体の大きい人では多めの量を、気温が低く、身体の小さい人では少なめの量を選択する配慮が必要です。

そこで勧められるのが、「のどの渇き」に応じた自由な飲水です。運動中、自由に水分を補給できる環境を整えることが大切で、スポーツドリンク など水分・塩分を補給できる飲料を用意し、適宜飲水休憩をとるなどの工夫をしましょう。 補給量については、「のどの渇き」に応じて自由に補給することで適量が補給でき、体重減少量(脱水量)は2%以内に収まります。

子供の水分補給

夏のスポーツ活動中にスポーツ飲料を自由に補給した場合、大人は発汗量の60〜 70%を補給できますが、子供は喉が渇いたと感じにくい場合があるため、大人が意識的に水分補給を促すことが重要です。大人よりも体温が高く、発汗能力の劣る傾向があるため、熱中症のリスクが特に高く、適切な水分補給は、ジュニアアスリートのパフォーマンス向上と健康維持に不可欠です。

子供は遊びや練習に夢中になると、水分補給を忘れてしまうことがあります。安全なスポーツ活動のためには、のどの渇きに応じて自由飲水ができるように指導し、その能力を磨くようにしましょう。状況に応じて水分補給タイムを設けるなどの工夫をしながら、子どもたちが自由に飲料を利用できる環境を整えることが大切です。飲み物としては、水、スポーツドリンク、電解質飲料などが推奨されます。コップ1杯程度ずつ、こまめに飲み、 冷たすぎる飲み物は胃腸を冷やす可能性があるため注意が必要です。

補給する飲料の中身としては、 一般のスポーツドリンクなど0.1〜0.2%の食塩と糖質を含んだものが効果的です。スポーツドリンクは、水分と電解質を素早く吸収できるように、糖質や電解質の濃度が調整されているため、水やお茶よりも胃内容排出速度が速いという特徴があります。研究によると、スポーツドリンクの胃内容排出速度は、水と比較して約1.5倍速いという結果が出ています。

ただし、余り糖質濃度が高くなると胃に負担がかかり、胃もたれや腹痛などの消化器症状を引き起こす可能性があります。エネルギーの補給を考慮すれば、4〜8%程度の糖質濃度がよいでしょう。

 [食塩相当量が0.1~0.2g(100ml中)であれば、0.1~0.2%の食塩水に相当します。]

効果の高い身体冷却

身体冷却とは

冷却方法は大きく2つに分けることができます。

身体外部冷却

アイスベストや冷水浴(アイスバス) 、アイスパック、送風などを用いて皮膚などの身体の外部から冷却する方法です。手掌前腕冷却はこれに該当します。

身体内部冷却

冷たい飲料などを摂取し身体の内部から冷却する方法です。内部冷却は皮膚や筋肉の温度を大きく低下させることなく身体の内部(核心部)を冷却できることが特徴です。最近は氷と飲料水が混合したシャーベット状の飲料物であるアイススラリーの摂取が注目されています。

身体冷却は過度な体温上昇の予防・抑制のための重要な暑熱対策です。競技現場や日常生活でも実施可能な運動前・運動中の身体冷却法としてアイススラリー摂取手掌前腕冷却について紹介します。

手掌前腕冷却

手掌前腕冷却は手の掌と前腕を冷水に浸けて、身体外部から冷却をしていく方法です。

手の掌には、動脈と静脈が直接連絡している特殊な血管が存在しているため、冷却された血液が深部に戻り、身体が冷却されます。手の掌と前腕は体幹部と比べて容積に対する表面積の比が大きく、熱を身体の外へ逃がしやすい構造で、片手よりも両手の方が効果的です。冷水に変わるデバイス (アイスパックや手掌冷却用の機械)の使用も可能ですが、浸水による冷却が最も高く、10〜15℃程度の冷水10分程度漬けることが望ましいですが、短時間でも冷涼感を得ることができます。

アイススラリー

アイススラリーとは、水と微小な氷がシャーベット状に混ざっ た氷飲料です。アイススラリーは低温で流動性が高く、従来の氷よりも細かい氷の粒子を使用しているため表面積が大きく氷が水に溶ける際に体内の熱を多く吸収することができます。液体状であるため、胃腸から素早く吸収され、体全体に冷却効果をもたらすことができ、シャーベット状の口当たりで、喉ごしが良く、飲みやすいのが特徴です。

そのため、アイススラリーの摂取は冷たい飲料の摂取よりも非常に高い冷却効果を有しており、有用な暑熱対策の一つです。

アイススラリーは主に専用の機械で作製されていますが、氷とスポーツ飲料や選手オリジナルのドリンクを市販のミキサーにかけて、アイススラリーに近いクラッシュドアイスを作る ことができます。クラッシュドアイスでもアイススラリーと同程度の冷却効果があり、氷の粒をより細かくするとさらに冷却効果が上がります。

アイススラリーは口当たりの良さと飲みやすさ、深部体温の十分な低下を得るために多くの量を摂取することがあります。しかし低温 (約-1℃) の飲料であることに加え、急激な冷却作用によって胃腸の不快感を抱く可能性があります。適切な摂取量とタイミングを検討し、自身の身体の変化を把握しておくことが必要です。身体が快適に冷却される感覚が得られると運動パフォーマンスにも効果的です。

まとめ

熱中症は、日常生活やスポーツ現場で発生する身近な事故です。適切な対策を怠ると、重症化し最悪の場合は死に至ることもあります。正しい知識と事前の準備でしっかりと対策をして安全な運動を行いましょう。

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