前回のコラムでも書いたように姿勢の歪みは、身体が釣り合いを取る上での適応や変化です。
今回は自分の姿勢はどのようになっていてなぜそうなるのかを知り、それに対する対応策を知ることで理想的な姿勢を目指していきましょう。
姿勢の分類で自分の姿勢を知ろう
ケンダルの姿勢分類
猫背や反り腰、骨盤の歪みなど姿勢について様々なパターンがありますが、ここではケンダルの姿勢分類を使って姿勢を4つのタイプに分けていきます。これは、機能障害を起こす活動過多(筋の硬さ)と筋力の弱体化という特徴的なパターンに伴った頭部の位置と骨盤の位置を観察したものです。
【ロードシス】
若年者に多く、椎間関節の負荷がかかるため椎間関節障害や腰椎分離症に注意が必要です。
【カイホロードシス】
肥満の方に多く、腹筋群の弱体化が原因となるため姿勢矯正には体幹の筋力強化が必要です。
【フラットバック】
痩せ型の肩に多く、上位の胸椎が前屈み(猫背)になり骨盤も後傾になるため弯曲によるクッション作用がなく、椎間板症や椎間板ヘルニアを誘発しやすい姿勢です。
【スウェイバック】
姿勢保持の筋力低下により起こる姿勢で、長時間の同一姿勢や老化によって姿勢を保つことができなくなります。腰痛や肩こり、肩関節周囲炎などの障害を引き起こします。
Jnndaによる姿勢歪み症候群
人間の身体の運動はいくつかの関節と筋肉が機能的合胞体となって運動パターンを可能にしています。主に関節を動かそうと働く主動筋と反対に働く拮抗筋が存在し、例えば膝を伸ばそうとする時の主動筋は脚の前側の筋肉(大腿四頭筋)で拮抗筋は脚の裏側の筋肉(ハムストリング)のように相互抑制を行っています。
姿勢の歪みはこの相互抑制に歪みが生じることで発生します。特定の筋肉の活動過多や弱体化によって機能不全を起こすと、代償的に動作を行おうとし、その結果姿勢の歪みとなるのです。
【上部交差性症候群】
上部交差症候群は、丸みを帯びた肩と前頭位の姿勢を特徴としています。PC作業などの長時間座っている人や運動(筋力)不足などによって発生し、慢性的な肩こりや頭痛、痛みの原因となります。肩関節の不安定性や伸展、外旋制限がみられ、インピンジメント症候群や上腕二頭筋腱炎、胸郭出口症候群などの原因となります。
【下部交差性症候群】
下部交差症候群は、腰椎前弯の増加と骨盤前傾を特徴としています。スポーツ選手や肉体労働者などに多く、LPHC【腰椎-骨盤-股関節複合体】の筋肉の緊張と弱体化のアンバランスによって発生します。体幹の筋や腰部の不安定性がみられ、腰椎分離症やハムストリングスの肉離れ、膝関節痛の原因となります。
【回内症候群】
回内症候群の人は、足部の過度回内、膝の屈曲、内旋、および内転(X脚)を特徴としています。扁平足や外反母趾など足部に問題を抱える方の多くはこの症状を抱えています。足関節の不安定性や背屈制限がみられ、足底腱膜炎やシンスプリント、踵の痛み、腰痛、膝痛の原因となります。
姿勢を治す方法は?
身体は全体で釣り合い(運動連鎖)をとりながら姿勢を維持しています。姿勢が崩れた状態で長期間過ごすと別の部位で代償し、累積負荷となって運動機能障害を起こし痛みや障害の原因となります。
代償動作を改善し、異常な運動パターンを修正し、機能的な身体コントロールを再教育させることが姿勢の崩れを治し障害や痛みの発生をなくすために必要です。
機能的運動療法(コレクティブエクササイズ)
【痛みを改善し、関節可動域を確保する】
機能的な運動療法(治療)を行うために、はじめは痛みがなく、できるだけ左右差のない運動可動域を獲得します。痛みのある運動は、基本的には治療として行うべきではなく、痛みを軽減させるには、必要に応じ徒手理学療法・物理療法を実施します。
【機能的運動療法(コレクティブエクササイズ)の手順】
他動的な治療で改善した他動的関節可動域を、患者がコントロールして使えるように、運動療法を併用することが必要です。
【機能的運動療法(コレクティブエクササイズ)の実際】
可動域制限の原因となっている過緊張筋に対しては、関節可動域改善エクササイズを行い、弱体化している筋肉には活性化エクササイズおよび段階的筋力強化エクササイズを行います。正しい運動パターンを再教育するために、呼吸とともに体幹の安定化エクササイズおよび運動パターン修正エクササイズへと進みます。運動パターンの修正は最初から完璧を目指すのではなく、今よりも少しでも良くなることを目標とし、負荷の大小よりも運動の質を高めることが重要です。
【機能的運動療法(コレクティブエクササイズ)の目的】
治療は最終的には、日常生活またはスポーツ活動で頻回に行われる異常な動作パターンを修正し、正しいパターンが無意識下でコントロールできるように、反復練習する必要があります。再発を予防するためには、累積荷重損傷の原因となる組織にかかる物理的ストレスをリセットし、姿勢矯正や日常生活での代償パターンがなくなることが目的です。
まとめ
姿勢改善は、健康な生活を送る上で非常に重要な要素です。科学的な根拠に基づいたアプローチと、専門家のサポートを受けることで、より効果的に姿勢を改善し、身体の痛みや不調を解消することができます。